風力発電に投資すると、気になるのはその売電価格です。
売電価格は出力によって違いはありますが、一定価格に設定され、売電価格が保証されています。
ただそれは再生エネルギーを普及させる目的であり、一定に普及すると売電価格は変わってくるかもしれません。
投資家にとって気になる売電価格は、どのように推移していくのでしょうか?
固定価格買取制度
再生エネルギーの固定価格買取制度は、2012年からスタートしました。
太陽光発電や風力発電によって生み出された再生可能エネルギーは、固定価格で一定期間電力会社に売ることが出来ます。
2012年は次の売電価格でスタートしました。
出力20kW未満の風力発電では59.40円、出力20kW以上の風力発電では23.76円となります。となっています。
また出力10kW未満の太陽光発電では42.00円、出力10kW以上の太陽光発電では43.20円となっています。
固定価格買取制度によって、再生可能エネルギー普及に勢いが出て、多くの企業が参入し、太陽光発電設備や風力発電設備が作られました。
買取り価格の推移
それでは2012年から、売電価格はどれぐらい変化してきたか見てみましょう。
出力20kW未満の風力発電
2012年度 | 55円 |
2013年度 | 55円 |
2014年度 | 55円 |
2015年度 | 55円 |
2016年度 | 55円 |
出力20kW以上の風力発電
2012年度 | 22円 |
2013年度 | 22円 |
2014年度 | 22円 |
2015年度 | 22円 |
2016年度 | 22円 |
このように風力発電の売電価格は変化しておらず、買取期間も20年間となっています。
しかし太陽光発電の売電価格は、年々下がってきています。
2012年度が出力10kW以上で43.20円だったのが、2016年度では25.92円と大幅に下がっています。
2012年からは、買取制度によって多くの太陽光発電設備は作られましたが、風力発電設備はそれほど多く作られていませんでした。
風のシミュレーションが難しい、設置場所を選ぶなどが、参入の壁となっていたのでしょう。
しかし2016年になると、風力発電への参入企業も一気に多くなり、設備の申請は800件を越える勢いで増えています。
これは、利益の少ない太陽光発電から、売電価格の変わっていない風力発電へと、参入企業が移ってきたからです。
実際に太陽光発電で電気を売って利益が出るのは、今年または来年いっぱいだと言われています。
買取り価格はどのように決まるか?
発電した電気の買取り価格は、経済産業省や調達価格等算定委員会による見解を元にして、経済産業大臣が決定します。
発電事業の必要となるコストや適正な利益を計算し、それを元に算出して決定されます。
太陽光発電の売電価格が下がったのは、広く太陽光発電設備が普及し、設備の価格などが下がったために、そのコストが減った分が売電価格に反映されたのです。
風力発電の今後の価格
風力発電もさらに普及し、設備投資のコストなどが下がれば、今後は売電価格は下がっていくのは間違いないでしょう。
少なくとも売電価格が高くなるということはないと思われます。
風力発電の売電価格は、据え置かれてきましたが、中長期的には引き下げを行うことが示されています。
現在の日本の風力発電の売電価格は、他の国と比べると2倍近くと高い水準にあります。
これを徐々に下げていくことで、建設コストなどを引き下げる努力を事業者に促していきます。
設備利用率を25%ほどに上げることを想定し、それを元に買取り価格目標を設定し、段階的に引き下げていく予定です。
ドイツでの固定価格買取制度
ドイツでは世界に先駆けて再生可能エネルギーの普及に努め、1991年には再生可能エネルギーから生産した電力の公共系統への供給に関する法律を制定します。
この法律では、再生可能エネルギーの買取が義務化されます。
そして買取り価格の水準も決められ、ドイツの再生可能エネルギーの普及を促進していきます。
しかし固定価格買取制度が始まると、国民に賦課金が課せられ、再生可能エネルギー普及と同時に、その金額も増えていき、2013年には月額1620円になりました。
国民への負担が大きくなるなど、その他にもいくつか問題が発生し、ついにドイツは2017年には固定価格買取制度を廃止すると決定しました。
日本の状況
日本ではまだ国民への負担は科せられていませんが、ドイツの廃止を受けて、その舵取りは困難になってきています。
東日本大震災後の脱原発や電力不足、電気料金値上げによる需要の変化、これらにより微妙な舵取りをしなくてはいけなくなりました。
ただ急激な締め付けを行うと、せっかくの再生可能エネルギーの普及にブレーキをかけてしまいます。
そこで新たな買取制度を設け、段階的に買取り価格を低くしていこうとしています。
2017年からの売電価格
2017年には再生可能エネルギーに関する特別措置法、FIT法が施行されます。
これに伴い、認定方式も変更され、売電価格の決定方法も見直される見込みです。
そして電源種別によって、トップランナー方式、低価格提言スケジュール、入札方式の3つに分けられる予定です。
トップランナー方式
効率的に発電する事業者のコストを基準として、毎年価格を決定する方式です。
産業用の電力料金を買取り価格の目標とし、それに徐々に近づけるという方針で進められます。
太陽光発電をメインに取り入れられる方式です。
入札方式
入札希望者の事業者を確認し、その中で希望する売電価格を提出してもらい、売電価格の落札者を決める方式です。
主にメガソーラーなどの大規模発電事業者が対象になると思われます。
低価格提言スケジュール
数年かけて、目標の売電価格まで段階的に価格が引き下げられます。
主に住宅用太陽光発電と風力発電で、取り入れられる方式です。
2017年3月31日までに運用開始済みの設備は、そのまま現行制度の買取り価格が使われます。
そしてそれ以降は、改めて認定を取得することになります。
ただ2016年6月30日までに認定を取得し、2016年7月末時点で電力会社と接続契約は締結しており、運転を開始していない場合は、2017年4月1日の新認定と見なされ、その時点の売電価格が適用されます。
その他にも、2017年4月1日以前のいつに認定を取得したか、また電力会社との接続契約はいつ行ったかまたは未契約なのか、そのようなことでもその発電設備の売電価格は現行制度のままか、新認定になるか変わってきます。
2017年4月1日のFIT法からは、認定基準も変わってきます。
今までは未稼働案件が大量に存在しているなどの問題があったので、そのような課題の解消と、長期的な発電を促すように認定基準が決められます。
事業内容の適切性・事業実施の確実性・設備の適切性の3つが新認定では精査されます。